イスラエルの大学系VC - テルアビブ大学の「TAU Ventures」
イスラエルのスタートアップはミリタリー技術の研究を基にしたものが中心で、イスラエルを開発拠点にしながら、シリコンバレー等の米国拠点で人材と資金を調達して世界市場を開拓する、技術スタートアップの「イスラエル・モデル」でこれまで成功してきました。
一方で、これまでイスラエルの大学からのスタートアップはあまり注目されて来なかった印象があります。大分前ににイスラエルのTechnion(イスラエル工科大学)から大学によるVC設立の相談を受けた事があり、そのような話を聞いた記憶があります。その時は確か自分の大学だけのCaptiveのVCにすると上手くいかない、フィナンシャルなディシプリンが大事という話をしました。
その後、イスラエル国内トップのテルアビブ大学がイスラエルの大学としては初の大学系VC「TAU Ventures」を2018年に設立、1号ファンド$20Mから18社に投資をされて、今回$50Mの2号ファンドの設立を発表しています。
TAU Venturesは現状イスラエルで唯一の大学系VCとの事ですが、他のイスラエルの大学も関心を持っているようです。
TAU ventures is still the only fund in Israel to be affiliated with a university, but he says most of the other Israeli universities have expressed interest in the model, and have been in contact with him.
但し、大学というビューロクラティックな組織でVCを作るのは大変で、大学はスタートアップのスピードに対応できず、独立した組織を作るのが一つのチャレンジだったと語っています。
There are several challenges, Cohen says, to establishing funds like this in Israeli higher education institutions. “Universities are fairly bureaucratic organizations, and if you get caught in a university’s bureaucratic vise you won’t be able to form any kind of body that deals with startups, because that has to move fast. One of the challenges for us was to create an independent body.”
日本では、2004年設立のUTECの成功に牽引されて10社近くの大学系VCが設立されている世界でもユニークな状態にあります。UTECを始めとするこれら大学系VCの取り組みは、研究者や学生の起業家マインドを醸成し、リスクマネーと人材タレントが大学の周辺に集結することで、大学をハブとしてディープテック・スタートアップのエコシステムが形成されてきました。
イギリスも、オックスフォード大学関連のVCが設立されたのは2015年で、それ以降スタートアップとイノベーションへの取り組みが加速されています。
シンガポールは、シンガポール国立大学(NUS)等のスタートアップへの取り組みは20年程前から優秀人材をシリコンバレーに国費で派遣することから始まり、近年シンガポール国内でのディープテック・スタートアップ創出に向けた取り組みは非常に盛んです。ただ唯一ディープテック・スタートアップのシード/シリーズAをリードできるUTECのような大学系VCがまだシンガポールに存在しない為に奥のベンチャーがインキュベーションとアクセラレーション段階から抜け出せていない印象を持っています。
グローバルなVCは、イスラエルでも事業がほぼ確立できてスケール可能なベンチャーに投資してきましたが、国内の大学での研究を事業化するという泥臭いディープテック・スタートアップにリスクマネーを投じて袖を捲って汗をかける大学系VCがイスラエルでも設立された意義は大きく、シリコンバレーを前提としたこれまでのイスラエル・モデルに加えて、今後はイスラエルでも自国の大学の周辺に新しいイノベーションのエコシステムが出来ていくのだろうと思います。
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イスラエルの大学