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卒業式の総長メッセージ

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 大学の卒業式というとスティーブ・ジョブズのスピーチが有名ですが、日本でも各大学の卒業式がライブ配信されるようになって、各大学が卒業生に送るメッセージがオンラインで見れて興味深いです。 いくつかの大学の総長/学長式辞を拝見しましたが、その多くがどちらかというと社会全体を中心にした表層的な内容である中で、早稲田大学の田中総長の式辞が最も心に響きました。ウクライナからとロシアからの双方の留学生に対する思いやりができるしなやかな感性と、たくましい知性をもって人の道から外れず進んで世界に貢献して欲しいという早稲田大学の卒業生への言葉は教育者である大学としての最も大事なメッセージだと思いました。 ウクライナで戦争という理不尽なことがなぜ起こるのか、なぜ止められないのかにつき政治学はある程度説明はできるものの、これを止める有効な手段がないことへの無念さも表明されておりました。 イノベーションで人が使う道具としてのテクノロジーが進化しても、最後は人間の内面に関わる問題で人間は最も苦しむという不都合な真実に改めて直面し、政治学を含む人文・社会科学という学問を活用して人類社会の幸福と持続可能性に貢献するような人間自身のイノベーションにも取り組みたいという思いを強く致しました。 オックスフォードで DPhilという学位はまだ出来てから105年とまだ歴史は短い のですが、オックスフォード大学では中世よりMAが大学大学で教えることが許される本来のライセンスでした。これはオックスフォードの学部卒業生が入学から7年経つと取得できるライセンスなのですが、その心は社会に出た後の4年という経験をもってMAというライセンスが形成されるという事でした。その意地でも卒業はスタートなのでしょう。 これから資本主義が1次元から複数次元に拡張され、民主主義と権威主義との対立が先鋭化する歴史的な困難な時代に向き合う中で、他者に洗脳されずに、自ら情報を探し、自分の頭で真実を見抜き、自分として正しいことを判断し、自分の意見を言う勇気を持てるような教育を受けた人がどれだけ活躍するかに世界の平和と人類文明の継続がかかっているかと思います。 全ての卒業生の皆様の今後のご活躍に期待致します。

大隈重信

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今年は 大隈重信 没後100年。薩長出身ではない非主流の立場で明治維新の日本の財政と外交に携わり、2回首相を務めた政治家。民間活力による産業振興を行う小さな政府論者であって、東西文明の調和の理想を持っていた。1881年43歳の時の政変で在野となり、44歳の1882年に東京専門学校を設立、その後政府に復活し、外務大臣だった1889年51歳の時に爆弾テロで右脚を失い、76歳から78歳まで二度目の総理を努め、1922年1月10日に83歳で亡くなった。「自分の人生には功績よりも失敗の方が多い」と述べる大隈は、鋭い直感力を持っており、やるなら命がけで本気でやれ、というのが幕末以来の信念だったと。 特にイギリス風の政党政治の導入を目標としていたことが印象深く、早稲田大学は、つまり日本のオックスフォード大学となるべく設立された、と理解しました。 明治維新の時に掲げられた日本という国の理想には全く道半ばで、逆に政治的、倫理的、科学力的、教養的にも日本社会は衰退しているのではないかとさえ思ってしまいます。100年前と言えばまだついこの間でもあり、改めて世界で輝く日本への理想を持って取り組みたいと思う。 イギリス風の政党政治を目標に 「イギリス風の政党政治を作り「 輿論」を政治に反映させ、東アジアに安定した秩序を作り、清国や列強と貿易を拡大して日本を通商国家として発展させることができるのは、伊藤ではなく自分である、と。」いう強い自負心が大隈にはあった。 ここで「大隈は、国民のよく考えぬかれた理性的な意見である「輿論」と、むしろ気分や感情に影響された意見である「 世論」を区別している。」 「大隈は輿論にもとづいた政治を理想とし、中産階級以上の自立した個人がリードしているイギリス風の政党政治をめざした。しかし、世論の力も知っており、世論に流されないように、さらに世論をできる限り味方に付けようと試みながら、理想の政治をめざした。」 経済発展も大隈は「イギリスの商業は自由貿易を主義として「大陸」を相手として世界のいたるところで「競争」してきたので発達してきた、とイギリスを理想のモデルとしてとらえる」。また「列強に対抗するためにも、さらなる教育の充実を主張した。読み書きや、国民の「心性を開拓」して知識を啓発する普通教育だけでなく、「専門学の講究」(高等専門教育と研究) も重要だと言う。それは、政...

「学問のすゝめ」

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福澤諭吉は 「学問のすゝめ」 の中で産業革命からのイノベーションの本質を極めて正しく捉えていたと思います。 『右に論ずるところをもって考うれば、国の文明は上政府より起るべからず、下小民より生ずべからず、必ずその中間より興りて衆庶の向かうところを示し、政府と並立ちて始めて成功を期すべきなり。西洋諸国の史類を案ずるに、商売工業の道一として政府の創造せしものなし、その本は皆中等の地位にある学者の心匠に成りしもののみ。蒸気機関はワットの発明なり、鉄道はステフェンソンの工夫なり、始めて経済の定則を論じ商売の法を一変したるはマダム・スミスの功なり。この諸大家はいわゆる「ミッヅルカラッス」なる者にて、国の執政に非ず、また力役の小民に非ず、正に国人の中等に位し、智力をもって一世を指揮したる者なり。その工夫発明、先ず一人の心に成れば、これを公にして実地に施すには私立の社友を結び、益々その事を盛大にして人民無量の幸福を万世に遺すなり。この間に当り政府の義務は、ただその事を妨げずして適宜に行われしめ、人心の向かうところを察してこれを保護するのみ。故に文明の事を行う者は私立の人民にして、その文明を護する者は政府なり。これをもって一国の人民あたかもその文明を私有し、これを競いこれを争い、これを羨みこれを誇り、国に一の美事あれば全国の人民手を拍って快と称し、ただ他国に先鞭を着けられんことを恐るるのみ。故に文明の事物悉皆人民の気力を増すの具となり、一事一物も国の独立を助けざるものなし。その事情正しく我国の有様に相反すと言うも可なり。』     学問のすゝめ

凡庸な悪

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  凡庸な悪:「悪とは、システムを無批判に受け入れることである」 ①現行のシステムを所与のものとして、その中でいかに「うまくやるか」について、思考も行動も集中させる、という生き方 ②現行のシステムを所与のものとせず、そのシステム自体を良きものに変えていくことに、思考も行動も集中させる、という生き方 ( 9割の悪事を「教養がない凡人」が起こすワケ - 歴史と哲学が教える「悪の陳腐さ」の恐怖 ) 国や組織の腐敗の原因は①にあり、それこそが「悪」というものだ。組織という相互幻想を守ろうとする人は性悪になって倫理を見失う。改竄指示で人を自殺に追い込む官僚はアイヒマンと同じ「悪」。マニュアルに従って心ない対応するもの行くつく所アイヒマンになるのだ。 起業家や未来を創るリーダーがすることは②であるが、それはすなわち悪ではない「善」の行いなのだと思う。

推論的ジレンマ

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フィリップ・ペティットの言う推論的ジレンマ( Discursive Dilemma )は大変興味深い。人間の集団である組織の目標は、構成する個々人の目標とはいずれも一致せずに異なるものとなり、かつその組織の目標はその決定方法に依存する。  

ボリス先輩

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  ボリス先輩はハチャメチャですが人間として面白味があります。非合理的な人間を統率する事はロボットにはできず、一定の知性と人に好かれる素養がリーダーには必要なのだと感じます。

英国議会の開会式

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2021年の英国議会の開会と女王陛下のスピーチ。名誉革命等を経て産業革命を可能としたInclusive Political Institutionである議会政治が偶然の積み重ねで出来上がった事が興味深い。見方によっては滑稽かもしれませんが、伝統と歴史を大事にする文化もその形成に関係があると思っています。 伝統を大事にすることは細かい積み重ねを大事にするという事で、一歩一歩の貢献を後世からも末長く称える文化にも支えられています。議会で答えなかったり嘘をついたり都合良く記憶を失くしたりすることを認めるとそれが悪しき慣例になってしまいますが、それらを一歩お一歩排除して伝統を創っていくことが伝統と歴史を大事にする文化につながり、その差が国の繁栄の差に繋がるのだと思います。

女王陛下の肖像画

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英国議会のやりとり。オックスフォードのモードリン・カッレジの大学院生が投票によりMCRの部屋から植民地支配の歴史を象徴する女王陛下の肖像画を外した件、奴隷貿易で富を得た卒業生で寄付者の批判のあるセシル・ローズの像を外さないオリエル・カレッジでのアカデミック150名のボイコット、ケンブリッジのチャーチル・カレッジが名前変更を考えている件からオックスブリッジの左翼学者をどうしたらいいかという議論。ケンブリッジをチャーチルと改名する法律を通し、ケンブリッジを「チャーチル・ユニバーシティ」と呼んでやればone in the eye for the leftiesだと笑。内容はともあれ、議論にユーモアがあるのがいいですね。  

PMQ

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  今朝のPMQ。教育とG7について。世界のワクチン摂取につぃては、(血栓が出ていますが)首相はオクスフォード・アストラぜネカ推し。議長から首相に質問に答えるように注意。議長の役割は極めて重要です。40分ですが、なんと日本の党首討論の45分と違うことでしょう。イノベーションが牽引する国の発展には、健全なInclusive Political Institutionの存在が不可欠です。

PMQと党首討論

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  日本の党首討論がモデルにした英国の2週間前のPMQ。水際対策の質問。インド株が広がっている中なぜ多数の国を赤色国から黄色国指定に変更したのか。黄色国へは基本は渡航をしない事を要請するもの。黄色国からの帰国者は10日の自主隔離と違反者には£10Kの罰金があり、ワクチンの摂取も進んでおり、法的な禁止ではなく自主性に任せると説明。スコットランドで友好国の日本から12万本の桜の木の寄付を受けたが植樹祭に来てくれるかとの質問に、既に行った自由貿易協定の「the Cherry on the cake」と返答。議論がきちんとされるか、されないかの違いは大きい。 で日本の党首討論がありました。比べて見てどうでしょうか。

国家はなぜ衰退するのか

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邦訳 『 国家はなぜ衰退するのか 』繁栄と衰退は イノベーションを産む政治経済体制と組織があるか否かに因る。搾取する国や組織は滅びる。 “Nations fail today because their extractive economic institutions do not create incentives needed for people to save, invest and innovate.“ 自由にトライアル&エラーを促すインセンティブが繁栄の鍵。日本の明治維新は世界の中でも素晴らしいExtractive InstitutionからInclusive Institutionへの体制変更だったが、これを維持しないといつでも搾取体制に戻って衰退してしまう。思うに日本の衰退を止めるのは既得権益による利権支配と官僚による権限支配からの脱却が必要で、端的にいうとこれらの支配エリートによる創造的破壊への恐怖を打破して、官主導ではない自由な学問研究とそれに基づくベンチャー等による民間でのイノベーションを創出続けられる政治経済体制と組織を維持発展できるかどうかにかかっている。