VC25年目に、改めてベンチャーキャピタルについて
明日からの2022年でVC歴25年になります。初心に戻り、尊敬するVCの言葉をまとめました。
(1)VCは事業を創出する事業
セコイア・キャピタルの創始者のドン・バレンタイン氏は、VCの仕事は「事業を創出する事業で、時には新しい産業をも創出する。VCは金融取引ビジネスではなかった。VCは新しい会社を作っていく。たまには新い産業も作っていく。」と言っています。新い会社を構築し、新い事業を創出し、新しい産業をも構築していくのがVCの使命です。
“ we were in the business of creating businesse
s, and sometimes creating industries; we were not in the financial transactions business. We were going to build companies. We were going to build an industry once in a while”
- Don Valentine, Sequoia. CapitalGupta, U. (2000), Done Deals : Venture Capitalists Tell Their Stories, edited by Gupta, U., book, Harvard Business School Press, Boston.
バレンタイン氏は2019年に亡くなられました。今はアカウントがなくなっていますがセコイアの投資先でもあったLinkedInで繋がっていたのは多分日本人で唯一だったかと思います。
(2)チームの構築と成長を支援
クライナー・パーキンスのジョン・ドーア氏は「 偉大な起業家とCEOは良いチームを構築できる。良いVCは良いチームの構築と成長を支援しなければいけない。」と言っています。会社も事業も人が集まって成す事なので、詰まるところ如何に良いチームを創れるかにかかっています。良いコーチとして、如何に人の心を動し人とチームを育てて行けるかがVCのアートです。
"Great entrepreneurs and great CEOs are team builders. And good venture capitalists must help build and grow teams." -
- John Doerr, Kleiner Perkins, Gupta, U. (2000), Done Deals : Venture Capitalists Tell Their Stories, edited by Gupta, U., book, Harvard Business School Press, Boston.
2009年クライナー・パーキンスのホリデーパーティでジョン・ドーア氏と |
(3)VCの醍醐味
セコイア・キャピタルのマイク・モリッツ氏は「 (VCの仕事の)最もエキサイティングの所は、毎日が数百のメロドラマで構成されること。」と言っています。それぞれの夢や希望、野望や欲望を持った個人が集まって何かを成そうとする時には、有りとあらゆる揉め事やトラブルが起こります。そのような人間ドラマを楽しめるのがVCの醍醐味なのです。
The most exciting part of being a venture capitalist - "Every day is composed of a hundred soap operas."
- Mike Moritz, Sequoia Capital, Moritz, M. (2000), Inside the Minds: Venture Capitalists, edited by Ebrandedbooks Com, eBrandedBooks.com, Incorporated.
モリッツ氏は尊敬する大学の先輩ですが、2009年ごろに日本に関心がありますか、と聞いたら「not in foreseeable future」と即答されました。
(4)VCとは呼ばない
コースラ・ベンチャーズの創業者のビノッド・コースラ氏は「長期的な視点で会社を構築する事は、短期的なIRRの為に投資をする事とは全く異なる活動だ。なので自分の事は絶対にベンチャー・キャピタリストと呼ばない。自分の事は起業家の為のベンチャー・アシスタントと呼んでいる。」と言っています。時流に乗って当たりそうな会社に投資する機会を探索する宝くじ目当てのVCと一線を画すように言っている事だと思いますが、孫氏が投資家に違和感持って資本家と言い出したのと通じる所もあると思います。VCはトレンドをフォローし時流に乗って当たりくじを探すだけの存在ではなく、人のやならい新い会社、新しい事業と産業の構築を仕掛けるプロデューサーでありたいと思っています。
"Building companies for the long term is a very different activity than investing for short term IRR. That’s why I have NEVER called myself a venture capitalist. I call myself a venture assistant to entrepreneurs”
- Vinod Khosla, Khosa Ventures. Twitter Post
ビノッドとは過去に米国の投資先でしばらく一緒に取締役をしていた事があります。ビノッドは自分でも論文も読み色々なアイデアを出し、立ち上げ初期の取締役会は毎回技術ミーティングのような感じでした。ビノッドは2001年の初代のフォーブス誌ミダス・リストの1位になった時に46歳でしたが、来年は67歳になります。それ絵もまだ現役で、人のやらないイケている投資をしており同じテイストを感じています。
VCは勝ち逃げを狙って30歳で引退するようなつならない仕事ではないと思っています。お金があれば誰でも投資家を名乗れますが、良いチームと会社を作り、新しい事業と産業を作っていくベンチャーキャピタリスト(ベンチャー資本家)になるには、まだまだ徳を積んでいく必要があります。
初心に戻って新年を迎えたいと思います。