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大学に年3%の事業成長を課す10兆円ファンド

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日本経済新聞2022年2月25日記事「 国内大学、遠い世界レベル 10兆円ファンド運用にリスク 」からのメモ。 ファンドで人工知能(AI)や量子技術など最先端研究を後押し。 支援校は「国際卓越研究大学」として、当初2~3校、段階的に6校程度に拡大。 年3000億円の運用益目標で1大学数百億円規模を支援。24年度から運用益を配分。 米ハーバード大が4.5兆円、英ケンブリッジ大が1兆円規模の基金。米エール大や英オックスフォード大は年9%の収益を稼ぐことも。 卒業生の寄付金が主な原資で大学の自己責任で運用のリスク。 日本のファンドの主な財源は税金 。元金、金利の返済が必要。損失が生じた場合の穴埋め、低金利下で安定的運用益を配分できるにリスク。 政府は23年度にもファンドによる支援先決定。日本経済新聞による学長アンケートでは国公立、私立の40大学が関心。 政府による大学の支援要件:①事業収入の年3%成長②「合議体」の設置③高い研究力。 事業収入は国立大の場合、大学発ベンチャーを通じた知的財産による収入、企業からの共同研究の協力金等。 大学は3%成長が可能になるような事業戦略を示し政府が審査。 支援を開始したあとに事業収入の増加率が単年度で3%を下回ってもすぐに支援を打ち切らないも、 国/JSTが事業戦略もみて長期的な視点で継続するかを判断。 合議体は大学の執行部から独立し中長期の経営戦略などを担う。国立大の場合は「法人総合戦略会議(仮称)」と称し財務計画など経営の重要事項を決定。会議の構成員の人数は10人程度が適当。執行部には経営と研究の担当者を分けて配置。 経営の資質に優れた人材を集める 。22年度以降に国立大学法人法の改正を検討。 ファンドは科学技術振興機構(JST)に設置する。実際の運用は資産運用の会社に委託。法改正し JSTの運用担当の理事に農林中央金庫の出身者が就き専門スタッフを集めた 。 税金による政府の10兆円大学ファンド。支援には大学での事業収入の年3%成長が要件。大学は3%成長が可能になるような事業戦略を示し政府が審査。経営目線を入れて大学に事業成長を課す。それで大学の国際競争力は上がるだろうか。海外の大学は卒業生の寄付が財源、運用にも研究にも政府は当然関与せず。良い研究には学問の独立と自由が必要とも思う。 cf. 早稲田大学のエンダウメント

人間の死にざま

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 「 生き物の死にざま 」に「死」という生命の発明について考えさせられる。 カゲロウが3億年生き残り続けたのは、儚い命の為。生物は次の世代の為に生きる。個体の「死」は種としての存続のための新陳代謝のメカニズムなのだ。 不老不死のクラゲとして知られる ベニクラゲ には、5億年間生き続けているものもいるのでは。 そもそも、単細胞生物には「死」がない。ひたすら自分のコピーを繰り返す単細胞生物には生物学的な定義での「死」はないとされている。 38億年の生物の歴史中、単細胞生物しかいなかった28億年間は生物に「死」はなかった。 「死」は10億年ほど前に多細胞になった生物が自ら作り出した偉大な発明なのである。 「死」のない単細胞生物はコピーミスによる劣化が起こり、また環境変化に適合っできないと種として絶滅するリスクがある。 新しいものを作りだす仕組みが「死」なのである。生命は「死」という再生の仕組みを作り出した。 多細胞生物でも アブラムシは同じ遺伝子を持ったクローンを作る。環境が合わないと絶滅する。 哺乳類で珍しく真社会性生物の ハダカデバネズミ は老化しない。不老長寿。年齢に関わらず病気や外部用要因による死亡率sが一定。おいくることはなくても死は常に隣り合わせ。 テロメア を進化させて、老いて死ぬ事は生物が望んで作った仕組み。 人間の倫理学を説いたカントが動物は人間の為に存在すると言ったらしく、動物は倫理学の対象外だったのかと思う。 1990年のオックスフォード大学のオープン・デーで生物学の講義をしていた リチャード・ドーキンス 先生が、講義の終わりに学生から「人はなぜ生きているのか」と問われて「遺伝子を伝える為」と答え切ったのを覚えている。ドーキンス先生的にはキャリアである人間は死んでも遺伝子は存続するのだが、意識を持った人間は自分が死んでも他人の記憶の中でも生き続けるのだろうと思う。すると、人間の死にざまは、それぞれがどのような物語を残せるのかにかかっているのではないか。 cf.  若返りの方法がここから見つかる!不老不死の生物・べニクラゲがもつ驚異の力 不老不死の鍵を握る哺乳類「ハダカデバネズミ」。老化を見せず生殖も(今のところ)永遠に続ける 知っておきたいテロメアとエイジングの関係

失敗のすすめ

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ベンチャーキャピタルの秘伝の一つは、我々があらゆる失敗の経験を蓄積していることにあります。何かに取り組む際におおよそどのようなトラブルが起こるか予測がつき、それらのリスクをマネージしていくことでダウンサイド・シナリオを避けて行きます。成功には再現性はありませんが、失敗には再現性があります。その観点でも失敗は財産なのです。 致命的でクリティカルな悪い失敗を何とか回避しつつ、良い失敗を積みかさねて活かしていく事が大事です。自分は避けたいですが、他人や他社、他国の致命的な失敗も学ぶことで財産となります。 自分の関与先でも上手くいかない事は当然多々あります。全ての投資先において常に失敗とトラブルの連続です。上手くいくかどうかの違いは、諦めずに続けられたかどうか、失敗から学び失敗を活かしながら変わり続けられたかどうか、致命的でクリティカルな失敗で詰まなかったかどうか、だけかと思います。また、失敗をして危機的な状況下では逃げたり責任を押し付けたり(忍法掌返し、と言われる術)をする人々が出てきますが、誰が逃げず最後まで一緒に戦える真の仲間と同志だったか判別する局面でもあります。そのような戦友がまた自分の財産となるのです。 日本の失敗を恥じて隠す文化が、悪い致命的な失敗を招きます。これが日本のイノベーションの阻害要因となっています。日本の減点主義の教育の問題と、失敗した際に組織の面子と体裁を保つことだけに終始して、最後は辞任するだけで解決として全てを無かったこととして問題に蓋をする近年の日本の風習が原因かと思います。 成功は失敗と一体として生じるもので、失敗なくして成功も生ません。 以前必敗の経験を共有しようと試みた事がありましたが、中々難しく、「 失敗学のすすめ 」の以下が参考になるかと思いました。 ・失敗情報は主観で伝達。客観的な失敗情報は役に立たない ・失敗した人がどんな事を考え、どんな気持ちでいたかを第一人称で伝達する ・失敗の知識化のフォーマット   「・・・で死にそうになった事」など分かり易い タイトル     事象     経過     原因 (発生時にどう感じたか推定原因)     対処 (失敗前から失敗後)     総括     知識化  危険予知訓練と、仮想失敗体験が大事であること 局所最適全体最悪 マニュアルによる対策は形骸化、作業者を思考停止に追い込み、また

人類がつくった人工物の総量が地球上の生物量を上回るという転換点

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 人間がつくった「人工物」の総量は、こうして地球上の生物量を上回った (WIRED2020年12月記事)。 人工物をリサイクルしないと人類は滅びますね。 <記事のまとめ> 2020年かその前後2〜3年の間に、生物と人工物という2種類の物質の総量が逆転する転換点を迎える。 人間が生み出した人工物(人為起源物質)の総量が約1兆1,000億トンに達し、地球上の生物の量を上回った(『Nature』21年12月9日論文)。 生物量(水分を除いた乾燥重量)には、植物、動物、微生物など、生きているあらゆる有機体の重量が含まれる。 20世紀初頭には人工物の量は生物量の3パーセントにすぎず、この100年余りの間に急激に増加、年間300億トンずつ生産されている推算。 生産量が急激に増えただけではない。使用価値がなくなったものは、再利用可能でない限り、ただ廃棄されるようになったのである。言い換えれば、そうした人工物が蓄積されていく一方で、人間は自然界の生物を着々と消滅させ、いまや両者がほぼ同量になってしまったのだ。 このペースが続けば、20年後には人工物量が生物量の3倍近くに達する。 人工物の大部分を占めるのが建築資材。コンクリートを筆頭に、砂利などの骨材を含む建築資材が第2次世界大戦後に急増し、人工物のほとんどを占める(地球全体の数字)。 世界各地で生活水潤上がり、スマートフォンからクルマまで、さまざまなモノをどんどん買うように。使われているものと廃棄されたもの、リサイクルされたものを含め、プラスティックの量だけでも80億トンにのぼる。これは地球上にいる動物の総重量の2倍にあたる。 映画マトリックスでは、人間はある場所にやってくると増殖を繰り返し、ついには「あらゆる天然資源を使い尽くしてしまう」。つまり、ウイルスみたいなもの。 人工物のこうした急激な増加は持続できるものではない。どこまでくれば限界なのか正確にはわかっていない。 人類は弱毒化するのだろうか?

ウィルスの不思議

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地球上のウィルス全体の方が人類全体より重い ウィルスに関心を持たざるをえない。 医学者が対象とする人間が感染し病気となるウィルスは生物全体の保有するウィルスのごく一部。 「 京大おどろきのウイルス学講義 」は 獣医学者による人間以外の保有するウィルスを含めた解説。ウィルスについてまだ殆ど未知な事が良く分かる。また、生物はウィルスと共進化してきた切っても切れない関係。一心同体の関係で未来永劫共存していく相手。というよりも、そもそも生命の誕生に関わっており、また生命の進化も担ってきたウィルスは、極めて不思議な増殖マシーンで興味が尽きない。 ウィルスは遺伝情報を包んだ粒子。神が創った増殖レゴマシーンとしか思えない。 ウィルスは自分自身ではエネルギーを作れず。 ウィルスは自分自身では増殖できず、生物の宿主の生きた細胞に入って増殖する。 細胞は2つにしか分裂できないが、ウィルスは一気に多数に増殖できる。 ウィルスは30nm-400nmの大きさ。 地球上に膨大なウィルスが存在。海水中の深海では1mlに100万個、沿岸の海水では1億個のウィルスが存在。 どんな働きをしているのかまったくわからないウィルスばかり。 物質量カーボン炭素量で見積もると、人類全体より地球上のウィルス全体の方が重いとと推測されている、という衝撃。 生物のDNA中にウィルスの遺伝情報。レトロウィルスは生物の進化に大きな役割。生物とウィルスは共進化。 ちなみに、この共進化が物質から生命への進化を可能にしたカギのようだ。 東京大学の研究成果「 物質から生命への進化を可能にしたカギは寄生体との共進化か 」 これまでウイルスなどの寄生体と宿主生物との共進化は、生物進化における重要な駆動力のひとつだと考えられてきましたが、本研究成果は、その起源が生命誕生前までさかのぼる可能性を示しています。寄生体との共進化が、物質から生命への進化を可能にしたカギだったのではないかと発表者らは考えています