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Showing posts from November, 2021

モンティ・ホール問題

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  情報がある2/3の確率と情報がない場合の1/2の確率の差の16.6%は情報の量だろうか。

ベンチャーキャピタルの歴史

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  VC: An American History VCの歴史についてまとめた本(2019年ハーバード大学出版)   19世紀の米国の捕鯨漁にVCのルーツを見て、 ARD 、 Greyrock , Venrock , Arthur Rock , Tom Perkins , Don Valentine から2000年のドットコムバブル直後 までのVCの歴史が纏まっています。 ブームになったクリーンテックへのテーマ投資 はVC業界として失敗した取り組みでした。 ・Venture capital investments in “cleantech” in recent years appear to be a classic case of strategy-structure misalignment. 「VCファームのリターンにとって、GPの人的資本が組織的資本の2〜5倍大事であり、パートナーのタレントへの依存度が高いことからも、1959年のLimited Partnership の活用からVC業界は驚くほど組織的な進化をしていない。」という以下コメントがありますが、今のVCファンドが内包しているファンド期限の制約などは、いずれチャレンジしたい課題と思っています。 ・As the VC industry faces the future, an important question is whether firms’ organizational structures will ever add as much value as their “partner capital.” Michael Ewens and Mathew Rhodes-Kropf find that the human capital of the general partners in a venture capital firm is between two and five times more important than its organizational capital to explaining its returns. ・The fact that partners’ talent matters most is an important finding, and it is

オックスフォード大学のイノベーションへの取り組み

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 オックスフォード大学発ベンチャーのタイムライン。 元来ベンチャーなどからは縁遠い大学でしたが、25年前に ビジネススクール を創るという革命があり、大学がベンチャーに力れを入れ始めたのはここ5年強だと思います。特に2015年に東大でいう UTEC に相当する Oxford Science Enterprise(OSE )が設立されたのをきっかけに、 東大TLO に相当する Oxford University Innovation 社の活動も活発になってベンチャーの輩出が一気に活発化したのだと思います。 Oxford University Innovation     オックスフォード大学の100%子会社TLO+α 売上£31m(2020年) 大学及び関連研究者への還元額£16.6m(2020年) 設立スタートアップ数19社(2020年) 企業等との契約数846件(2020年) 学特許・特許出願管理件数4793件(2020年 Oxford Science Enterprise(OSE)   2015年設立の株式会社形式の外部の連携投資会社( Oxford Sciences Innovation から2021年に社名変更) グーグル等から£600m規模を調達、大学が一部出資 オックスフォード大学特許への優先アクセスと新設会社持分(大学と50/50)取得 オ大発ベンチャー100社の持分保有、現在の時価£2B うち60社の設立の関与し1500人に雇用そ創出 年間5社の大学発ベンチャー設立から年間20社に増加 年間 £125mの大学発ベンチャーへの投資から年£600m に増加 世界中から科学者と経営者人材をオックスフォードに引き寄せる

集団は非倫理化する

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人はなぜ集団では非倫理的になるのか?  (WIRED SCIENCE2014.06.18記事)より、集団になると脳から倫理が奪われるといるMITの研究。 なぜ人間は集団で行動すると、恐ろしい行為に走りやすいのだろうか。この疑問については数多くの説があるが、それらの説は大きく3つのカテゴリーに分けられる。第1は、「われわれ」の利益のために「彼ら」を犠牲にして行動するのは「合理的」だから、という説明。第2は、集団のなかに入ると、人間は匿名的な存在になり、個人の責任がごまかしやすいから、という説明。第3は、集団になると、個としての自己意識や、自分なりの道徳観念が薄れるから、という説明だ。 マサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学のチームはこのほど、この第3の説についてもう少し詳しく見ることにした。その結果、われわれは集団になると、「倫理と関係する脳の領域」の活動が鈍るらしいことが明らかになった。 「個人は性善説、組織は性悪説」で考えていると言っていた人がいたがその通りかもしれない。人類は社会的生物となり、企業や国を含む組織、自由市場による競争原理を発明して進化してきた。 個人が集まって組織を構成した時に、組織はまるで各個人を細胞としてもつようなシステム生命体となり、それを構成する個人とは異なる独自の意志を持って動き、時には暴走する。組織の中の個人が思考を停止して歯車化した時に 凡庸な悪 を生じてしまう。 集団の暴走を制御する為の組織や 企業のガバナンスと倫理 は極めて面白く大事なテーマ。脳科学や心理学的要素もあるが、人間の集まりである組織を研究する社会科学も今後のイノベーションにとってより大事になっていくと思います。 ところで 推論的ジレンマ では人 間の集団である組織の目標は、構成する個々人の目標とはいずれも一致せずに異なるものとなる、とされました。すると システム生命体としての組織という集団は、構成要素である個々人の意識とは別の「メタ意識」を持っているのでしょうか。 cf. 邪悪について、平気で嘘をつくということが悪の根源であり発現である 凡庸な悪

2100年の世界人口

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オックスフォード大学による2100年までの世界人口の予想。人口は頭打ちになるが、どうような世界になっているだろうか。 2020年: 78億人 2040年: 92億人 2060年: 102億人 2080年: 107億人 2100年: 109億人

倫理資本主義

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マルクス・ガブリエルの倫理資本主義が興味深い。倫理は神や精神論によらず善い行いを論理的に追求する学問で、今後世界の共通言語になると思っています。日本では倫理の教育が極めて遅れていると自分自身を省みて思います。 インタビュー冒頭で 日本には自由に対する多くの制約があります。 ある意味でこれはソフトな独裁国家だと思います。 と語っており、日本の本性を見透かされています。以下、彼の話のポイント。 コロナは人類への警告。人類は変わる必要があり、今後はスピードと成長ではなくスローな幸せの経済学が必要で、コロナをきっかけに倫理や道徳が世界の価値観の中心となる倫理資本主義が大切になる。 稼いだ富の意味は、富を共有できる可能性、他者の為に善い行いができる可能性を手にすることにある。稼いだ富を倫理観に基づいて再分配することで完璧な構造となる。 富の分配を倫理的価値の判断で行うことでより良い世界になる。1000億円稼いだら500億円は倫理的に善い行いに還元することで世の中に貢献できる。 善い道徳的な行いに価格をつけることで倫理資本主義という完全なシステムが実現できる。 カントの言うように機能する法律は道徳的構造によって構築されている。なので法に従っているのが悪魔であっても構わない。それと同じように企業がSDGsを信じていなくてもSDGsに従う企業の方が従わない企業よりもより良いと言える。 永続するサステイナブルな企業を作る為には、倫理的に善い企業であることが必要となる。企業の持続可能性を保つ為には今後全ての企業内に倫理チームが必要となる。今後、倫理士や哲学士のような専門職が税理士と同じように必要となる。企業内の倫理・哲学チームの目的はもちろん利益を上げること。

説得の科学

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リーダシップを発揮し人間社会で何か物事を成し遂げる為には、最後は人を動かせるかどうかにかかってくる。人をその気にさせる説得の科学( Science of Persuasion)についての動画が勉強になる。人間の意思決定は以下の6つのショートカットに影響される為、これを上手く活用すると説得ができてしまう。 Reciprocity(互恵原理):最初に想定外のギブをすることで、人はお返しをしたくなる。) Scarcity(希少原理):希少な者を人は欲しがる。例えば製品の利点を説明するだけではなく、その独自性を説明し購入しなかった時に失うことを訴求すると人は買ってしまう) Authority(権威原理):人は権威に弱く、説得に際してはなぜ自分が信用できる知識を持った専門家で権威があるかを相手に伝えることが重要となる。また自分の専門性を他人から人に伝えさせることがとても効果的。 Consistency(一貫性原理):過去との一貫性を人はポジティブに判断する。最初に小さなコミットをさせると、次にそれと一貫性のあるより大きなコミットを人にさせることができる。 Liking(好意原理):人は自分が好意を持つ人に対して同意することを好む。人は自分と似ている人、自分を褒める人、共通のゴールに向けて自分に協力してくれる人に対して好意を抱く。交渉の前に個人情報を交換してお互いの似ていいるところを見つけるとお互いにとってよりよい合意が出来る。相手との類似点を見つけてまずは褒めた後に仕事の話をすると効果的。 Consensus(総意性原理):不確実性が高い時に、人は他人の行動を見て自分の行動を決める。利点を伝えるだけでなく、自分と似た他人が同じ事をしていること伝えるとより効果的に説得されてしまう。 最後は自分と他人の心を如何に操れるかが究極のテクノロジーになるのだと思う。

モチベーション

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リーダシップの授業で、Zoom上でクラスの皆が書き込んだそれぞれのモチベーションのグラフの合作。人々のモチベーションは様様であり、またれぞれのモチベーションも時期や状況に応じて変化することを表している。

早稲田大学とオックスフォード大学

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いずれも都の西北に位置する 早稲田大学と オックスフォード大学 は 2020年4月17日付で 大学間協定を締結 されています 。「 この協定により、「早稲田大学と オックスフォード大学 の ”Computer Science”、 “Mathematics”、“Physics”分野での研究・教育面の組織的な交流の活性化が実現します。」との事です。 早稲田大学の Wikipediaの年表 を見ても 早稲田大学とオックスフォード大学はここ10年ほど近い関係があるようです。ぜひこれを更に深められればと思います。 2011年(平成23年) 10月 - オックスフォード大学に招かれ、吉永小百合がオックスフォード大学ハートフォードカレッジのチャペルで原爆詩の朗読を行った。 2012年(平成24年) 12月19日 - オックスフォード大学エクスターカレッジ学長来校。 2013年(平成25年) 4月 - 早稲田大学大学院入学式にオックスフォード大学フォルフソンカレッジ学長来校(4月2日) 10月 - オックスフォード大学サイード・ビジネス・スクールと早稲田大学ビジネススクールで双方向オンライン授業“Global Opportunities & Threats:Oxford (GOTO)“開始。 2020年(令和2年) 4月17日 - オックスフォード大学理工系3学部と大学間協定締結。

先人へのリスペクト

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京都大学広報に掲載された太田裕朗 さんの 「(寸言) 先人のエピソードを未来に」 を拝読しました。 「少し前,友人とオックスフォード大学を訪れた。有名なハリー・ポッターの映画のロケ地で知られるクライストチ ャーチの大食堂 は ,オックスフォ ード が 輩 出した 偉人の肖像画が数多並 んで いることで有名である。別の場所では,アインシュタインの筆跡が残る黒板など, 科学の発展のワンシーンを偲ぶ展示がある 。図書館もツアー見学可能で,今の天皇がお過ごしになったとのエピソードも残る。まるで歴史博物館に来ているような感覚を得 るが,観光客向けというわけではなく,何かを学び,成さんとする人に対し,示唆を与えること が目的のように感じた。人物の固有名詞が主役であって,その人固有のエピソードを伝えようと しているように感じた。」 以前の日本経済新聞の記事 「英オックスフォード大、少数教育が生む自信」 にも以下のような記載がありました。 オックスフォードの学生の多くは入学当初、「ペテン師症候群」に陥るといわれる。経済学者のアダム・スミス、哲学者のトマス・ホッブズ、物理学者のスティーブン・ホーキング……。大学で学んだ偉人らの名と歴史を刻んだ重厚な図書館や学舎、マトリキュレーションといった伝統に圧倒され、「自分は不相応な場にいる」と感じる。 しかしこの先人たちへのリスペクトの積み重ねに触れる事で自分自身の目線も上げさせられます 大事なのは、これが 各個人へのリスペクトの積み重ねであって、個人を殺して国や組織を崇めるものではない事です。 一人ひとりの個人としての先人へのリスペクトの積み重ねが伝統となって誇りとなり、それらが同じ試みを続ける勇気を与えてくれるのだと思います。  

量子力学の奥深くに隠されているもの

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  邦題 『量子力学の奥深くに隠されているもの: コペンハーゲン解釈から多世界理論へ』 :量子力学はその計算結果の正しさからshut up and calculate派により実世界での応用が進められてきましたが、その解釈はまだ未解決。コペンハーゲン解釈では、観測による波動関数の収縮を必要とする。これを避けるのが宇宙が分岐していく多多世界解釈。この本にも出ている Universe Splitter はジェノバの研究所で光子のスプリットにより2の選択肢を2つの宇宙に分岐するという設定のアプリ。このアプリにより設定した選択肢から分岐結果が送られて、例えばコーヒーを飲む自分がいる宇宙と、紅茶を飲む自分がいる別の宇宙に分岐されていく。この解釈だと観測者問題は回避できるが、無数に分岐する多くの宇宙が生成されている事になる。個人的には、宇宙の構成要素には時空間と物質エネルギーに加えて情報も根源的ま存在であると考えることから、この本ではごく簡単に言及されている量子ベイズ主義(QBism)もより興味深い解釈と思っております 。 AUdibile版 「Something Deeply Hidden - Quantum Worlds and the Emergence of Spacetime」

I stand upon my desk

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  "I stand upon my desk to remind myself that we must constantly look at things in a different way" 起業家に必要なのは勇気を持って立ち上がって別の見方で世界を見ることだと Jeffry Timmons 先生がBabson大学での授業で引用した映画 「Dead Poets Soceity」 の一場面がずっと心に残っています。

ディープテック

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「ビジョン・ファンド参戦、「研究型」新興企業にチャンス」 と報じる日経新聞の記事。 日本でも「ディープテック」という言葉が浸透しましたが、多分最初に日本で使い出したのは自分が UTECにいた2017年からだったと思います。これはシリコンバレーでは聞かなかった表現で、元々シンガポール政府が研究開発型のベンチャー育成に舵を切った時に打ち出した言い方で、その後イギリス等でも使われるようになっていたものです。日本ではハイテクとかリアルテックとか、ゴリテクとか言っていましたが、Deep LearningやDeepMindの影響でDeepがクールな響きになり普及。日本も英国もシンガポールも、シリコンバレーとは違う技術に軸足を置いたベンチャーを切り口にしたい想いが感じられます。この分野は金を突っ込んでもうまくいかず、どちらかというとお金はコモディティで、より大事なのがサイエンスが分かり、人を動かすアートに長けた太田さんのような経営人材です。流入資金を背景にそのような方々が増えていくのがポジティブ・ファクターだと思います。 ACSLのコメントも記事中に引用されていました。 「ドローン開発のACSLは13年設立で、18年の上場までに約30億円を調達。IPO(新規株式公開)以降も約52億円を調達して機体開発に積極投資してきた。上場前に同社の社長に就任し、現在は会長を務める太田裕朗氏は「日本ではディープテックのグロース資金が足りていない。本来であれば早く上場しない方が好ましい場合も多い」と指摘する。」  

大学とイノベーション

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日本が敗退したのは、米国で大学がイノベーションの担い手になる革命が起きていたことに気づかなかったからと分析する日経エレクトロニクスの記事「 【電子産業史】1980年代:基礎研究に走った日本企業,欧米は大学・ベンチャー主体に 」。大学発ベンチャーに取り組む意義の原点であります。   図1 米国の大学における技術移転収入の事例 出典:『日経産業新聞』,1998年4月17日付。

大学とは何か

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「 大学とは何か  」吉見俊哉 (著) (岩波新書)  中世の大学の誕生から、19世紀のドイツ、20世紀の米国で進められた大学の変遷と明治維新後の日本での大学の誕生と国立大学の法人化までを俯瞰されています。 日本では 「19世紀半ばの江戸や大坂、長崎などの都市で生じていた現象は、「自由に浮動する」知識人=志士たちが列島を旅しながら有力な教師について翻訳された知識を必死で学び、その外来の知の普遍性によって旧套打破を図っていこうとする、中世ヨーロッパの大学勃興期にも似た出来事」があり、「日本の大学教育のなかで、私学の伝統が国家の後押しを受けてきた官学を凌駕する力強さをもっているのだとするなら、それはこうした幕末の草のネットワークと近代知が結ばれていった場が、まさしく日本の私学の根源にある限りにおいてであろう」。 「近代日本の大学で重要なことは、最初に帝国大学ができて、それに続いて慶應義塾をはじめとする私学ができたわけではないことである。順番はむしろ逆で、維新期における旧士族の危機感を背景にした私塾の興隆がまずあり、そのような草 の知が自由民権運動に結びついていくことに対する危機感が、帝大創設を促していった。」 この先の大学の在り方については 「私たちの時代は16世紀に似ていなくもない。時代が中世から近代へと向かったあの時代、新しい印刷技術が爆発的に普及し、それまでの都市秩序がより大きな領邦秩序に吞みこまれていくなかで大学は衰退した。ところが今、やはりデジタル技術の爆発のなかで地球大の秩序が国民的な秩序を吞みこみながらも、時代はむしろ近代からより中世的な様相を帯びた世界に向かっている。」 と書かれておりまますが、コロナ禍がペスト同様にもたらす人類への影響も含めて、良い意味での中世的な学問の世界への回帰には共鳴します。昔から学問には国境なくもはや英語は現代のラテン語になったのだと言えます。 オックスフォード大学もここ30年でも大きく変化しており、伝統を守りながら変わり続けられる事が生き残る為にも大事なのだと痛感する所。 著者は「大学は「エクセレンス」と同時に「自由」の空間を創出し続けなければならない。」と結びますが、「自由」であることが良い研究や学問の為に何よりも大事なのだと思います。 尚、本書では触れられてないのですが、1970年代頃から米国で形成された大学とイノベーシ

小澤の不等式

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εqηp + σqηp + σpεq ≧ h/4π ハイゼンベルグの不確定性原理はとても鋭い洞察でコンセプチャルな発見であったが、小澤の不等式は確率的な量子 ゆらぎ、測定誤差、擾乱を区別して厳密に数式化した。 この問題を突き詰めると情報の問題に行き着く。 関連記事 "Universally valid reformulation of the Heisenberg uncertainty principle on noise and disturbance in measurement" Masanao Ozawa (Tohoku University) 日経サイエンス 「特集:小澤の不等式」 日経サイエンス 「2012年1月16日 ハイゼンベルクの不確定性原理を破った! 小澤の不等式を実験実証」 サイエンスジャーナル 「不確定性原理を破った!“小澤の不等式”は量子ゆらぎと測定誤差を区別」 ブログ 「不確定性原理の本質。。。小澤の不等式。。」

「学問のすゝめ」

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福澤諭吉は 「学問のすゝめ」 の中で産業革命からのイノベーションの本質を極めて正しく捉えていたと思います。 『右に論ずるところをもって考うれば、国の文明は上政府より起るべからず、下小民より生ずべからず、必ずその中間より興りて衆庶の向かうところを示し、政府と並立ちて始めて成功を期すべきなり。西洋諸国の史類を案ずるに、商売工業の道一として政府の創造せしものなし、その本は皆中等の地位にある学者の心匠に成りしもののみ。蒸気機関はワットの発明なり、鉄道はステフェンソンの工夫なり、始めて経済の定則を論じ商売の法を一変したるはマダム・スミスの功なり。この諸大家はいわゆる「ミッヅルカラッス」なる者にて、国の執政に非ず、また力役の小民に非ず、正に国人の中等に位し、智力をもって一世を指揮したる者なり。その工夫発明、先ず一人の心に成れば、これを公にして実地に施すには私立の社友を結び、益々その事を盛大にして人民無量の幸福を万世に遺すなり。この間に当り政府の義務は、ただその事を妨げずして適宜に行われしめ、人心の向かうところを察してこれを保護するのみ。故に文明の事を行う者は私立の人民にして、その文明を護する者は政府なり。これをもって一国の人民あたかもその文明を私有し、これを競いこれを争い、これを羨みこれを誇り、国に一の美事あれば全国の人民手を拍って快と称し、ただ他国に先鞭を着けられんことを恐るるのみ。故に文明の事物悉皆人民の気力を増すの具となり、一事一物も国の独立を助けざるものなし。その事情正しく我国の有様に相反すと言うも可なり。』     学問のすゝめ

井深大の言葉

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井深さんの素晴らしい言葉。 “ 科学的なデータにもとづいて、リスクが少ないような決定を下す一方で、我々に課されている最大のテーマは、挑戦そのものに伴う鋭敏な精神を失わないようにすることである。 決して失敗を恐れてはならない。恐れて何もしなければ、老人の会社になってしまう。 「これがソニーにとって良いことだ」と思えば、思い切って実行すべきだ。 責任とは、それができる勇気を持つことだ。 世の中というのは激しく変わっていく。文章に書き残す秘訣などあり得ない。変化に対し上手に大局的見地から物事を把握し、絞り込んでやれる人を育てる事しかない。マーケットもハードもどんどん変わるのが現実の世界である。人のやらない新しいことを苦労してやり抜き、デマンドをこしらえる。 この苦労をいとわずやっておく事が必ず後になってものを言う。 だから私は常日頃、仕事をやる以上は汗と血の流れ込んだ仕事をやり、その結晶のにじみでた製品を世に送り出せと言っているのです。 いつの世にも通用するのは、何をやるんだというしっかりした思想を持った上で、人のやらない事を苦労してやり抜くことだ。 一人一人が職場にあってソニーの歴史に何を残せるか、自分で探し出して動ける事がソニーの一番面白い、働き甲斐のあるところなのです。(井深 大)” 特に「人のやらない新しいことを苦労してやり抜き、デマンドをこしらえる。」に強く共感します。 ソニー創業者 井深 大 (まさる)